夢かかげる星のエアル
彼と私、お互いの疑念が衝突する。
威圧的に声を張る少年に若干臆してしまったが、私も引き下がるわけにはいかない。あなたは、何者なのかって。
「ゲオネスってなに?アノニマスってなんなの?」
少年は私をジッと見ていた。
きっと私が本当に害のないものなのかどうかを見極めているのだろう。見ても通り力なんてない若い女だ。相手は男の人、むしろ襲われるのは私の方だというのにも関わらず彼はいつでも太刀打ちできる体制を貫いている。
あんな衝撃で自らは疲労困憊になっているというのに、そんなことに構うことなく生きてきたのだろう。損傷は死を意味する。情けは罠。
一分一秒を、この人は―――。
「———ゲオネスは、僕が生まれた惑星」
月夜に照らされた銀色の髪が揺れた。
「アノニマスは、ゲオネス星人の永遠の脅威。二つの種は古より生存戦争を繰り広げている。僕をはじめゲオネスの民は、種の————ひいては個々おのおのの生存のためにその命を燃やす」
アノニマスに勝利するまで、勇敢なるゲオネスの血を絶やしてはならない、と少年はつけ足して。
「僕は今回、アノニマス撲滅作戦上重要な任務に任命された。宇宙空間内のアノニマスの集団の住処を探り、本部に報告するという重要な任務が。しかし、その途中で突如得体のしれないワープホールが出現した。通常、ゲオネスのロケットがそのような現象で損傷するはずがないのだが、何故か今回は通信も切断され、操縦を含む一部機能が作動しなくなった。なにをしても、不可解なことに」
「う、ちゅう…」
「ワープホール内部は空間が大きくゆがみ、その影響で生じた強力な重力変化に僕の意識と肉体は絶えることができなかった。身が引きちぎられるほど。アノニマスの罠だと思った。僕は種の生存のためになにも貢献できずに死ぬのだと悟った。が、目が覚めたらこうだ」