夢かかげる星のエアル
「そこからはもう驚きの連続です。なんせ常識が通用しないんですから」
「…しかし、そんなことが本当に…」
「信じてくれないかもしれません。でも、私はそれでもいいと思ってます。…ただ、伝えたい。彼の存在を、彼が地球にいたという事実を、私が伝えたいだけなんです」
***
俺————藤代(ふじしろ)翔太はその時、すっかりくすんだ野球ボールを片手に携帯画面を眺めていた。
自室の壁にはひと昔前に日本野球界で活躍した選手のポスター。大会で獲得したトロフィー。読みもしない勉強冊子の数々と読み散らかしている少年漫画。
そんないかにも高校生男子な部屋の中に俺はいた。
窓側に備え付けられたベッドに仰向けになって、ボールを上空に投げてはキャッチ。投げてはキャッチと繰り返し、携帯のバイブレーションを肌に感じたら即座にそれを確認していた。
相手はすぐそこに住んでいるハルカこと、天川 遥。
深夜一時すぎ、俺はあいつのことが地味に気になってメールを送り付けていたんだ。
送信ボタンを押して一息。携帯を枕の横に置くと、また俺はボールを投げては受け取る行為を繰り返し始めた。
気になっていたのは学校でのこと。
俺は、ハルカが進路、将来のことで何かしら悩んでいることを地味に感じ取っていた。…地味に。
その理由は簡単。
ハルカは俺やリカコがそういった話をするとき、いつもどこか遠くを見つめて会話に参加してこないことにも、俺は気づいていた。三年になった最近は特に。
いつも行こうと誘っても好きじゃないから嫌だといって断るような海に、目を向けるくらいに。
きっと、ハルカは自分自身と俺やリカコをくらべてんのかもしれねえ。そして、考えてる。
自分にはなにもない、と。
期限まで一週間、進路調査の紙になにを書こう、と。だから、話に参加してこない。
俺は、あいつが思っているほどたいしてできた男じゃないのに。