夢かかげる星のエアル
俺が野球の道に進むと断言してるのも、何に対してでもきっちり目標をつけなきゃ気がすまねえのも、俺が———怖がりだからだっていうことを知らないんだ。
自信がない。それ以外取柄がない。
そうでもしなきゃ行動する勇気がわいてこないから、俺は結局その便利な武器に頼ってる。
危険な賭けはできない。
野球は、たまたま小さいことからやってて、たまたまセンスがあったからってだけのこと、始めたのだって親父の影響がデカいしよ。
だから、ようは安パイなんだ。
それ以外の道もあるかもしれない。やりたいこと、ほかにも見つかるかもしれないけど、俺にはたまたま培った野球っていう武器しか扱えない。頭は悪い。今から新しい挑戦をしたってできっこないってあきらめて、だから野球の道を選択した。
もちろん、野球は好きだ。
でも逆に言えばその気持ちに甘えてる。
ここなら絶対に活躍できるから。
ここなら、間違いなく勝てるからって。
……悩むことも放棄した。自分にはどんな道があるのかと、考えることを放棄して、得意な道しか見ないことを決断した。
野球がいいんじゃない。
野球“しか”ないんだよ。
俺は、ハルカはすごいと思う。
言葉にはしねえけど、あいつは常に、考えてるから。
きっと、そのわけはいろいろある。
知らず知らずに背負ってるもんがあいつには、たくさんある。
フネばーちゃんのこと。青海のこと。
そして五年前のあの出来事をきっかけに、ハルカはどこか変わってしまった。
ハルカは、———夢にあふれた、女の子だったんだ。
そんなことを考えているあいだに、俺は瞼をしっとりと閉ざしていった。