夢かかげる星のエアル
***
「さぁさ、にーちゃん!あつ~いお茶だよお!」
「…お茶?それはいったい」
「ああああああ!フネばーちゃんありがとう!もう大丈夫だから!」
早朝、六時前。
私、天川 遥は、大パノラマの自然を目の前にして驚きを隠せていない少年を、とりあえず自宅へと案内することにした。
身体も疲れ切っていることだろうし、放置して死なれたら私が後味悪い。
ついてきて、と手を差し伸べる私…というよりも、頬についているウサチャン柄の絆創膏に視線を向ける少年は、黙ってその手を取ってくれた。
つまりは、あんなに頑固だった戦闘体制を解いてくれたということになる。私がアノニマス、っていう天敵ではないことと、ここには彼に危害を加えるものがいないことに納得してくれたんだろう。
少年のてのひらはがっちりというよりは細い印象だった。けれど握ってみると角ばった男の人の手であることに気づく。年頃の男子の手。少年は片手をついて立ち上がった。
私は、よかった、とりあえず納得してくれたんだ…と安堵した。
が、少年はそのまま歩き始める。
…仲良くおててをつないだままで、だ。
え、なになになになに。私はギョッとして彼の顔を覗き見たが、ヤツはまったくの真顔だった。幼稚園児や小学生ならするかもしれない。もしくはカップルだとか。
でも、私たちは思春期の若者どうしで…、
「ね!ねねねえ!なにしてんの!」
「なにって、ロケットの様子を確認するに決まっているだろう。なに、すぐ済む」
「ああああ、待って、それは分かった分かった!でも考えて?私を行かなくてもよくない?!一人で見に行っていいし!私待ってるし!」
「……なんだそれは。もとはといえばお前が手を差し出してきたのだろう。握れ、と」
「いっ!意味はき違えてる!!私はアンタが立ち上がるのを、手伝ったの!」
「……手伝った?握れという命令ではなく?意図が分からない」