夢かかげる星のエアル




それに、この物悲しい気持ちだって単なる私の主観であるだけだ。彼にとってはそれが当たり前。そこがどこかもどかしく思う。


聞いたところによると、彼は地球から推定10億光年先からやってきたのだそうだ。


本当に地球の外からきたのだと、私は眼をかっと見開いたものだ。


どうしてそれが分かったのか、それは彼のロケットにはゲオネス星と現在位置を相対的に推定するプログラムが搭載されていたから。でも、それだけがかろうじて生き残っていただけ。

救護を呼ぶ手段のGPS機能は完全にいかれてしまっていた。

つまりは、地球からは何も発信できない状態。

外部から、彼とロケットの位置検索をすることも、不思議なことに不可能。情報網も皆無。完全に孤立。八方ふさがりってわけ。

少年いわく、ワープホールなどでここまでの痛手を負ったことはないというが、私的には時空がゆがむほどの重力以上にピンピンしている方が怖いと思った。



「水分摂取など何年ぶりだろう」


————それに、ゲオネス星人とやらは、地球の常識とは並外れた肉体構造をしている。


長きにわたる異種との闘いのために、あらゆる器官は淘汰される道にあったらしい。

彼らの肉体はもはや私の理解の範疇外だ。

しかし、ややもすると少年からしたら私たちの方が変であることに気付く。そもそも、健全な人間っていう定義自体にもこちらの主観が入ってる。私たち地球側の一方的な解釈にすぎないんだ。




それと、日本語を何故話せるのかという点も、彼は割と丁寧に説明してくれた。

一言でいえば、翻訳装置が体内に内蔵されているのだそうだ。

ロケットもそう。なんでもゲネオスの文明の発展はすさまじく、全宇宙空間の生物言語、信号を変換して読み取り、自身の発言、発信も自動翻訳して出力する…だとかなんだか、私の頭では処理できないシステムが埋め込まれているのだという。


< 51 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop