夢かかげる星のエアル




「だから、住みなよ。他の人に迷惑かかったら、なんだか私、妙に責任感じて後味悪いし。そーいうの、嫌だから」

「……責任って、僕のことなのに。どうして感じる必要がある?なぜ手などを貸す?地球人には疑問ばかり浮かぶ」

「なんでって…単純に私があなたの立場になったとしたら、すごく心細いと思うからだよ」

「………心細くなどないぞ」

「……もうそれでどうしてそこまでポジティブなのかが私は知りたいよ。……いい?人は支え合って生きてるの!人って文字は、人と人が寄りかかって生まれた文字なの!」

「僕の星にはそのような概念はない。助け合っていてはいずれ自分の命が危険にさらされる。個々の問題は個々で解決。できないものは死ぬ。弱いものは死ぬ。そのようにすべては淘汰される。一人でいた方が身軽だ」




私は、また何も言えなかった。

彼があまりに真剣に話すから。これも私の主観が入ることになるけど思ったの。彼のいた世界が、あまりに酷なものに見えて仕方がなかった。



「助けられるってさ、案外悪くないものだよ」



だからかな。
いままで、なーんとなく過ごしてきただけの私が、なんの取柄のない私が、進路のことも全然決められなかった私が、こんなことを言うだなんて。

その場その時で楽しくて楽なことができればいいかなって思っていた私が、急に人間じみたことを考える。


ああ、そうだ。こんなこともあった。

例えば、私が道に迷って泣いていたとき、ショウタがどろんこになって助けに来てくれたこととか、海でおぼれていたところをリっちゃんに引っ張ってもらったことだとか。

それと、あの時も…———。



少し人生を振り返ったとき、あの時はどうでもよいと感じていたエピソードが今になると案外素晴らしかったものに思えてくる。不思議なことに本当なの。







< 55 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop