温かい絆を教えて

「車出して頂いて、ありがとうございます」

社宅の駐車場で課長の車に乗り込む前に言った。

「あ、気にしないで。
他の人の運転だと酔うことがあるから、大抵自分で運転させてもらうのよ」

「チャイルドシートですか?」

後部座席に乗り込みながら言った。

「課長ってね、お孫さんいるのよ。
ね、課長、可愛いんですよね?」

車が発進する中、助手席に座った先輩が教えてくれた。


「フフフ…そうなの。
親不孝な娘でね、未婚のまま子供を産んだの。
どうなることかと思ったけど産まれてきたら可愛くてね。
K町に住んでるんだけど、今度の連休も遊びに行くのよ」

「へぇ……そうなんですか」

「娘の子育て手伝いたいけど、この仕事だと難しいでしょ?
私の旦那も亡くなってるし、生活があるからね」


「……若いおばあちゃんですね」


明るくそれだけを答えるのが精一杯で、先輩と課長が会話を始めると、黙って考えた。




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