毎日、休日。
         

プー太郎




「んー……。またね」


と言うのは、和香子の彼氏の口癖だ。
〝腐れ縁〟のようなこの彼氏は、「またね」という言葉で自分が直面している問題をするりと躱してしまう、猫のような男。


朝、バタバタと和香子が出勤の準備をしているときに、のんびりと起き出してきて、冷蔵庫へ直行。そこから缶ビールを取り出して、大きな伸びをすると、おもむろにテレビの前に座りリモコンのスイッチを押す。


「……ちょっと、プー太郎。朝から何飲んでんの?」


「んー、おはよう、和香子。今日も綺麗だね」


〝綺麗な君に乾杯〟とばかりに、ニッコリ満面の笑みを見せて、缶ビールを掲げる彼氏の名前は、健人。
亜麻色の髪、ヘーゼルの瞳で見た目も外国人だが、日本籍を持つハーフだ。



出会ったのは、高校で英語の教師をしている和香子の職場。まだ和香子が新採用の初々しいときだった。健人が美術の講師として赴任してきて、一年だけ一緒に働いた。


健人の整った甘いマスク、日本人ではあり得ない容姿に、女子生徒はおろか同僚の女性職員は浮き足立っていたが、健人がロックオンしたのは、和香子だった。

「石井先生って、綺麗だね」

開口一番にそう言って口説いてきた健人。
甘く心地よい言葉で讃えられ、愛の言葉を囁かれて……。


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