毎日、休日。
その日、健人はいつ帰ってきたのか…。翌朝和香子が起きたら、健人は居間のソファーで寝ていた。
伸び放題の髪に、何日も剃られていないヒゲ、ヨレヨレのシャツを着る健人は、本当にホームレスのようだった。
和香子が出勤の準備をする気配に気がついて、健人が目を覚ます。
「んー……。和香子、おはよー」
と、一応朝の挨拶をしたが、まだ起き出す気配はない。健人は今日もこのまま、気ままな一日を過ごすのだろう。
「……健人?」
和香子が声をかけると、健人はヘーゼルの瞳を細め、優しげな微笑みを向けてくれる。
「私ね……。これ以上健人がダメになっていくの、見ていたくないんだ……。だから、もう、こんな生活は終わりにしよう」
和香子は思い切ってずっと考えていたことを、とうとう健人へ切り出した。
「終わりにしよう…って、どういうこと?」
健人の表情から、微笑みが消える。
「もう、私たち別れよう……」
その決定的な言葉を告げると、和香子は健人の表情を確かめることさえせずに、背中を向けた。
『またね』という言葉で曖昧にされてしまう前に。
その場しのぎのキスで、ごまかされる前に。
足早に玄関に向かい、急いで靴を履くと、振り返ることなくマンションを飛び出した。