毎日、休日。
……と思っていたけれど、その日、健人は帰ってこなかった。
それでも和香子は、健人が帰ってくると信じて疑わなかった。今までだって、健人がふらりと出て行ったきり、何日も帰ってこないことはあった。
健人の両親は離婚していて、父親は母国のイギリスにいる。日本人の母親は、和香子が彼と付き合い始める前に亡くなっている。健人が帰ってくる場所は、ここしかないはずだ。
しかし、和香子のそんなタカをくくった思考も、一週間も経てば揺らいでくる。
健人がいなくなって、もう一週間。和香子のマンションにはちょっと帰ってきた痕跡も見つけられず、電話もメール一本の連絡もしてこなかった。和香子の方から連絡を取ろうと思っても……、
「……そうか。健人の携帯は、この前ヤンキーに壊されてたんだっけ……」
「別れよう」そう言いだしたのは誰でもない和香子なのに、〝健人がいない〟ということが現実味を帯びてきて、にわかに焦り始めた。
毎日毎日、「今日は健人が帰ってきてるかも……」と思いながら、マンションの部屋のドアを開けてみても、そこに健人の姿は見つけられなかった。