毎日、休日。
彼の着る洋服や彼の使っていた歯ブラシもそのまま、彼が飲むためのビールも冷蔵庫に入ったままなのに、いつもそこにいた健人の姿だけがなかった。
――もう……、健人は帰ってこないんだ……。
そして、ひと月が経とうかという頃、和香子はようやくその現実を受け入れた。
心にぽっかり穴が開くというのは、こういうことを言うのだろうか……。
〝ストレス〟だと感じていた健人がいなくなってくれたのだから、もっとスッキリすると思っていたのに、和香子は眠れなくなった。
健人はどこに行ったのだろう?
本当にホームレスになってしまってるのではないか…。
それとも、あの容姿だからすぐに新しい恋人もできて、そこに転がり込んでいるのかもしれない…。
穴の開いた心は、いつも不穏にざわめいてしまって、和香子を眠らせなかった。
仕事をしている間は、健人のことを忘れていられたけれども、眠れないことは思ってもみないところで、和香子に多大な影響をもたらしていた。
「今、全県模試の事務局から連絡があったけど、うちの学校の英語の得点の一部が入力されてないらしい!」
進路指導主任が血相変えて、三年部へと駆け込んできた。