毎日、休日。
進路を計るために重要な模試であることもあって、三年部にも緊張が走る。データを見直してみたら、和香子が担当するクラスの得点がすっぽり抜け落ちていた。
「……え。私、入力しました」
和香子が戸惑ったような声をあげたので、さらに調べてみると、どうやら和香子は別の考査のシートに入力してしまっていたようだった。
「……申し訳ありませんっ!!」
和香子は進路主任や学年主任、迷惑をかけた教員たちに謝ってまわり、早急にもう一度点数のデータを送り直す処置をして、疲れ果てて職員室の席へ戻ってきた。
「大変だったね。…でも、しっかり者の石井さんらしくないね。このところ、体調でも悪いの?」
そう言って、古庄は気遣ってくれたが、和香子はただ首を横に振って答えるだけだった。
今までの自分だったら考えられないような失敗。
この失敗は、辛うじて平穏を保っていた和香子の心の堰を、一気に崩壊させた。
誰もいないマンションの部屋へと帰ってきて、健人の姿を探す。
「……健人。どこにいるの?……私を、助けてよ……」
ポツリと呟く声とともに、和香子の目から涙が零れた。