毎日、休日。
留学経験もあり、外国人(的な風貌)に抵抗感もなく、まだ若かった和香子は一瞬で健人との恋に落ちてしまった。
それから、付き合ってもう十年。
最初は年上の彼にリードされて、彼の魅力の虜になり、和香子は彼に夢中になった。
その頃は、彼も講師を続け、教員の採用試験も受けていたが、美術の教師の採用枠がなくなり、講師の仕事もなくなった。
時を同じくして、彼の日本人の母親が亡くなった。離婚をして本国のイギリスに帰っている父親とは、すでに音信不通になっている。
そうして、生活に困った彼が和香子のマンションに転がり込んできたのは、五年以上も前のこと。……そして、今に至る。
「健人。いい加減に髪を切りなよ。」
和香子から指摘されて、ケントはビールを飲みながら、自分のずいぶん長くなった髪をつまんで確かめる。
「んー、それは……。またね」
と、またお決まりの受け答えが返ってくる。
「それじゃ、プー太郎を通り越して、ホームレスだよ」
怪訝そうな顔をする和香子に対して、健人はまたニッコリと笑った。