毎日、休日。
展覧会の絵
それから、またひと月が過ぎてゆき、和香子は健人がいない日常にも慣れてきた。生きていくために、思ったよりも人間の心というものは逞しくできているらしい。少しずつ以前のように夜も眠れるようになった。
時折健人への想いが募って、どうしようもなく切なくなるけれども、その痛みを感じなくなるのには、もっと時間が必要なのだろう。
そんな毎日を過ごしていたある日の朝、同僚の美術教師が上気させた顔で、和香子のところへやってきた。
「石井先生!君、絵のモデルなんてやってたんだね!!いゃ〜、ビックリしたよ〜」
「……え?」
なんのことを言っているのか分からず、和香子は首を傾げた。絵のモデルなんて、健人にも頼まれたことがない。
「いえ、私は……。人違いだと思います」
その美術教師の話では、今開催されている県美展を見に行ったら、その大賞に入っていた作品に描かれている女性が、和香子にそっくりとのことだ。
「なんだぁ、石井先生じゃないの?なんだぁ…」
と、美術教師のガッカリしたような含みのある言い方と、意味深な目つきも気になったが、話の内容の方が和香子の意識に引っかかった。