毎日、休日。
だけど、勤務の間を抜けて、県美展が開催されている美術館に行くことはできず、和香子は休みの日を待って行ってみることにした。
――もしかして……、健人が……?
和香子の周りで美術に関わりのある人間といったら、健人くらいしかいない。
――でも、あの健人が絵を描いた……?
和香子と一緒に暮らす間、一枚の絵も描くことのなかった健人が。しかも、〝別れた〟和香子をモデルにして?
期待と疑いが入り混じって、和香子を落ち着かせなかった。
休みの日で、展覧会の会期も終わりに近いこともあって、美術館は思いの外多くの人で賑わっていた。
入選したたくさんの書や写真、彫塑をよそ目にして、和香子は絵画の大賞作品を探す。……すると、美術館のちょうど真ん中、いちばんメインとなる場所に、それは展示されていた。
高さが2メートルを超える大きな油絵。淡い色彩で描かれているそれには、等身大の一人の女性が描かれていた。
その絵の美しさと迫力に、和香子はしばし圧倒されて立ちすくむ。
そして――……
「……っっ!!」
思わず声にならない悲鳴をあげ、両手で口を覆った。