毎日、休日。
離れ離れだった時間を埋めるように、健人の眼差しが和香子を包み込んでくれる。
健人の愛は、何があっても揺らがない。
どうして、この眼差しを信じてあげられなかったのだろう。
どうして、この人から離れようと思ってしまったのだろう。
和香子の瞳から、涙が溢れてくる。和香子は、足りなかった自分の一部を、やっと見つけられたような気持ちになって、健人を見つめ返した。
「……健人がいなくなって、ずっと死にそうなくらい寂しかった。『別れよう』なんて言って、……ごめんなさい」
「和香子、泣かないで。君のために僕は生きているんだから、ずっと君の側にいるよ」
健人が今度は両手を伸ばして、和香子を包み込む。和香子は健人の胸に顔を埋めて、そのかけがえのない存在を改めて確かめた。
たくさんの人々の行き交う美術館のロビーで、健人と和香子の姿は皆の注目を浴びていた。それでも、二人はお互いの想いのまま、時間を忘れて抱きしめ合った。
しばらくして、幾分気持ちを落ち着けた和香子は、健人と一緒にもう一度あの絵を観に戻った。
健人の描いた和香子は、慈愛に満ちた笑みを湛えて、その絵を観る者を逆に見つめてくれている。健人はその絵のタイトルを、『Goddess』(女神)としていた。