毎日、休日。



「仕事なんてしてると、いつも和香子の側にいられなくなるからだよ」


と調子のいいことを言いながら、これから仕事に出るばかりの和香子を抱き寄せ、ビールくさいキス。おまけに、


「愛してるよ」


追いを打つように甘い言葉を軽々しく口にする。
それに対して和香子は呆れて何も応えられなくなる。顔をしかめ手の甲で唇を拭うと、マンションを後にした。



若いころは、自由に独特の時間軸で生きているこんな健人も、とても魅力的に見えた。それが美術家たるゆえんで、創造的な作品を生み出すために必要なことなんだろうと理解していた。


だけど……、もう和香子も三十歳を超えてしまった。
人並みに結婚して子どもを持とうと思うのなら、そんな悠長なことを言っていられる状況ではない。


夢を見ているような毎日を送るのは、もうタイムリミットだった。




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