毎日、休日。
仲直り
そんな和香子の心を知ってか知らずか、健人は気ままな毎日を送る。
和香子が高校教師として息つく暇もないほど働いているときも、気が向けばフラリと街に出てみる。その日の気分で何時間も歩き回ったり、河原で寝そべってみたり、パチンコを打ってみたり。
見た目からして目立つ健人は、この街の有名人で、ファンも多かった。ときには、年頃の女性たちや有閑マダムたちから、下心のあるお誘いもあるようだが、
「んー、またね」
と、曖昧な答えが返すだけ。そのときの「またね」は、〝永遠にない〟という意味だった。
なぜなら、健人はその浮ついた見た目によらず和香子ひとすじで、この十年、浮気なんて一度だってしたことがない。
そんな健人の毎日を知ってか知らずか、和香子は今日も勤勉に働き、そして健人に振り回される。
金曜日の放課後、仕事も区切りがつき、コーヒーカップを洗って帰ろうとしていたときのことだった。
「石井先生、携帯が鳴ってるよ!」
同じ学年部の古庄が、給湯室にいる和香子に声をかけてくれた。