君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
シンの馬に一緒に乗せてもらって、西の森を目指す。

初めて見る城外の景色。
自然が美しく、建物も溶け込んでいる。
人と自然とが上手く共存している町なんだ。

でも、行き交う人々は皆下を向いている。
目に光が宿ってないというか…。

せっかくの町並みが淀んで見えるのは、そのせいなのだろうか。

「この辺は、音楽に溢れてて、大人も子どもも歌ったり踊ったりして賑やかな町だったんですけどねー。

今の町からじゃ、想像できないでしょ?」

「そんな町だったんだ」

町がこんな姿だと、暮らす人たちの気分も暗く落ち込んでしまうだろうな。

「でも、また賑やかな町を取り戻すために皆戦ってるんだよね」

危機に陥っていても、諦めてはないはず。
皆が同じ目標を見てるから、支えられて、また誰かを支えるんだろう。

町の現状を肌で感じて、一刻も早く危機を脱したいと言うカナトの気持ちに、ようやく寄り添えた気がした。
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