君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
馬を走らせること1時間。
森のなかに古くて白い塔が見えてきた。

「ここが国境や門の監視をしている塔です。
さ、行きますか」

シンに促され、螺旋階段を上がっていく。
壁に手をついてみると、ざらりと砂がつく。

どれくらい前からある塔なんだろう。

急な階段は、少し上がっただけで息が上がってくる。
それでも上り続けると、見晴らしの良い場所に出た。

凄い風…。
眼下に広がる森から吹き抜ける強い風に、体を持って行かれそうになる。

塔に掲げられた旗も、パタパタと音を立てている。

「大丈夫か?」

「うん」

隣に立つカナトが体を支えてくれる。

「あの山を越えたらドルツ王国がある。
今日の夕方にはこの先にある門が開いて、ドルツの王子が会談のためにやってくるんだ」

「そうなんだ」

遠くに見える山のさらに奥。そこに、敵対しているドルツ王国があるんだ。
ここからだと、穏やかな森に見えるというのに。
暴動が絶えないなんて。

いよいよ明日が会談の日か…。

こうやって私が足踏みしている間にも、この世界は動き続けている。

タイムリミットは今日の夜。
それまでに突破口を見つけないと。
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