君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
「山賊共がすることなど、私には理解できませんよ。
他の国境はもっと酷い。暴動も日に日に勢いを増している。

…さて、この現状をご覧になって何か策でも思い付かれましたかな?」

「…」

策なんて、何一つ思い付くはずがない。
現実を飲み込むだけで精いっぱいの私は、隊長さんの挑発に視線ンを落とすしかなかった。

「ほら、見たことか!

王子、目をお覚ましください。
この女にリンタールを救うことなどできません」

カナトは奥歯を噛み締めて、隊長さんを見ている。

私は…。

何も言い返せない。
言われっぱなしで悔しいけど、その通りかもしれない。

気合いとか覚悟だけでは力が及ばない。
大きな壁がそこにはある。

この無力感、初めて味わう感覚じゃない。

また、守りたいものがこの手からこぼれ落ちていく。
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