君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
「なんなら、このままドルツへ送り込んでスパイにでもした方が、よっぽど価値があるのではないでしょうか」

今、なんて…?
平和的解決を望むカナトが、スパイなんて望むわけがない。

それに、スパイ活動なんてしてドルツにバレたらきっと命はない。
隊長さんにとって、私の命なんて捨て駒なんだ。

「そんなことはさせない。

まだ夜までには時間がある。
それまでに皆を納得させられれば文句はないだろう」

私の手を力強く掴むと、足早に塔を出る。
張りつめた空気を直に感じる。

言葉をかけてもいいのかな。
でも、何も言わないと不安が募るだけ…。

「ね、ねぇ、カナト。
いいの?このままだと私…」

「できることはあるはず。
それを城に戻って考える」

「…。
…うん」

劇団ひとつ救えなかった私が、王国を救おうなんてやっぱり間違ってたんじゃないのかな…。

どんどん弱気になっていく。
大きな不安を抱えたまま、馬は再び走り出した。
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