君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
1人で馬に乗るカナトの表情は、さっきからずっと冴えないまま。
きっと頭の中で色んなことを考えてるんだろう。

王国を守るための手段を。
そして、私を守るための手段を。

「難しい顔してますね、カナト。
ありゃ、行き詰まってる時の顔ですよ」

カナトには聞こえないように馬を操りながら、シンが声を潜めた。

「やっぱりそうだよね…。
私は、何をしたらいいんだろう」

馬に揺られながら、目を閉じて心を落ち着ける。
頭を空っぽにすると、どこまでも遠くの音まで聞こえてきそうだ。

風の音。葉の音。
そして馬の足音。

私ができることって、何かあるのかな。

いや、こういうときは、できることがあるって前提で考えよう。
今、私ができること。

あ…、馬の足音が変わった。
土の道から石畳になったんだ。
ってことは、町に入ったのかな。

この町も早く元気になってほしい。

ん?これは…。

はっと目を開く。
その時私の耳には、かすかに、だけどはっきりと聞こえた音があった。
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