君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
「シン!
馬を止めて」

「え?
何ですか急に」

止まりきらない馬から急いで降りて、そのままの勢いで駆け出した。

「神楽弥!どうした!?」

後ろからカナトの驚いた声が追いかけてくる。
でも、止まる訳にはいかない。

「どうしても気になることがあるの!
ごめん、すぐ戻るから!」

それだけ叫んで、止めに入ろうとする兵士たちを押しきって町の方へと走った。

古いけど趣のある家屋が立ち並んだ道。
建物の間をすり抜け、反対の通りへ出る。

そこからしばらく駆けると、開けた場所に出た。
大きな噴水がシンボルとなる広場。
その噴水の周りでは、数人の町人が集まって楽器を演奏していた。

打楽器がリズムを刻んで、弦楽器がメロディーを奏でる。
手拍子をしたくなるテンポの良い音楽だ。

周りでは、その演奏に合わせて、子どもたちが楽しそうにはしゃいでいた。

まだ、ここには賑やかな空間がある。
それは、私にとっての希望だった。
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