君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
澱んで見えていたはずの町並みが、いつしかとても軽やかに姿を変えている。

なんだ。
この町はまだ終わってない。
諦めてない。
盛り上げようとしてる人たちはいるじゃない!

音楽は人に力を与える。
その力を彼らはよく知ってるんだ。

「お姉ちゃんも一緒に踊ろ!」

一人の女の子が私の手を引いて、ちびっこの輪の中に加えてくれる。

一緒にくるくると回って踊ると、スカートの裾がひらりと舞う。
さっきまでの焦燥感が嘘のようにどこかへ飛んでいく。


きゃははと大きく口を開けて笑う子どもたちの笑顔につられて、私も楽しくなってくる。

「おや、お嬢ちゃんは見ない顔だね」

ステップを踏んでいると、打楽器の演奏をする白髪のおじいさんに声をかけられた。
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