君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
最後のフレーズを歌いあげると、声が町に吸い込まれていく感じがする。
気持ちが良い。

気がつくと、噴水の周りには大きな人だかりができていた。

「へー、姉ちゃん歌上手いな!」

「こんな綺麗な歌声初めて聞いたわ」

そんな歓声と拍手を受けて、私は深々とお辞儀をした。

「これだけお嬢ちゃんの歌声に寄せられて人が集まったんだ。
良かったら、もう一曲どうだい?」

おじいさんの言葉に、周りの人々は更なる盛り上がりを見せた。

「他にも歌ってよ!もっと聞きたーい!」

「え…?」

えーっと…。
何の曲がふさわしいかな?
これだけの人がいて、距離もこんなに近い。

どうせなら、今までやったことがないことをやりたい!

そう心に決めて、頭にイントロを流す。
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