君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
「ありがとうな。
おかげで皆の表情が変わった。
お嬢ちゃんのおかげじゃ」

演奏をしてくれていたおじいさんが、にっこりと笑って手を差し出している。
ぽっと心があったかくなるのを感じた。

その手を握り、私は頭を下げた。

「私の方こそ、ありがとうございました。
おかげで、大事なことを思い出させてもらいました」

「そうかい?

でも、お嬢ちゃんは誰にもできないことをやってくれた。
こんなにも人が溢れた広場を、もう見ることはないと思っておったからのう。

お嬢ちゃんの歌はこの町を救った。
素晴らしい力を感じたよ」

「…ありがとう、ございます」

私の歌が、町を救った?
そんなの大袈裟だとわかっていても、嬉しくて仕方ない褒め言葉。
なんだか自信もわいてきた。

そうだよ。
最初から私には歌しかないんだから。

「もう少し頑張ってみます!」

そう宣言をすると、おじいさんは大きく頷いてくれた。

あ、やばい。
そろそろ戻らないと!

二人のもとを離れてからだいぶ時間が経ってる。

慌ててカナトとシンのもとへ走り出した。
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