そういう、関係
飲み会は、混沌としていた。
メンバーの中には、元彼(と呼ぶのも躊躇われるけど)の姿もあって、気分は最悪だった。一刻も早く帰りたかった。
私は座敷の端っこの方で、静かに座り、出来るだけ目立たないようにしていた。

「ほらほら、好きなだけ飲んで~」

男は皆、目を血走らせて、女に集っている。
酔わせたら勝ち、と言わんばかりに、必死に酒を勧めている。
誰が、誰をお持ち帰りするのか、男たちの闘いだ。

かつて、私もあの中心にいたことがある。
多数のオトコに囲まれて、チヤホヤされて、勘違いして、浮かれていた。

まさに、尻軽女だった。
消し去りたい、私の黒歴史。


「優梨ちゃーん、髪型変えた?」
「まぁ……」

可愛いね、とすり寄ってきたのは、以前、女子会で取り沙汰された「モノが親指ほどしかない先輩」。(この人は、留年しまくって今や6年生らしい)

彼はきっと知らない。
女子の間で「親指さん」と呼ばれ、嘲笑われていることなんて。


「優梨ちゃん、今夜、どお?」

耳元で囁かれて、全身が粟立った。
私は顔を引きつらせながら「いや、予定が」と答える。

すると、

「あー、先輩ー、ダメですよ! 優梨にはカッコいい美容師の彼氏がいるんですから」

友人が意地悪な笑みを浮かべながら言った。全員に聞こえるような大声で。


彼女には、ソウちゃんは彼氏じゃない、と説明したはずだ。
何を思ってそんな嘘を、この場で公表するのだろう。

ここにいるのは、彼氏持ちだろうがなんだろうが、ヤレたらいいと思ってる野郎ばかりだというのに……。


私は、違うとも、その通りだとも言えず、黙り込んだ。
親指さんは、気まずそうに別の女の子に絡みに行った。


そして、私の元にやってきたのは


「もう新しい男みつけたのかよ」
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