そういう、関係
そう、思っていたのに……。

「辛かったね……」

ソウちゃんは悲しそうな声で言った。

どうして、そんなこと言うの。

ソウちゃんに出会わなければ
その温かさに触れなければ
辛い想いなんて知らずに済んだんだよ。

「やめてよ、同情されるようなことじゃない……っ!」

私は小さく叫んだ。
すると一瞬のうちに、ソウちゃんの腕の中に閉じ込められてしまう。

「どうして、そんなに優しくするの……っ」

突き放そうとしたけど、ソウちゃんはそれを許してくれない。

「優梨、」
「言ったでしょ? 私、最低な女だよ……」
「過去は関係ない! 周りからどんな風に見られてるかなんてのも、どうでもいい」
「……ソウちゃん」
「意地っ張りで、強がりで、そのくせ本当は臆病で、極度の寂しがりやで……優梨は精神的に脆い。世の中には、そういう人の弱さに漬け込む奴がいっぱいいるんだよ」

だから優梨は、悪くない。
ソウちゃんは呟いた。それは、自分自身を納得させるかのような言い方だった。

「私……ソウちゃんの優しさに甘えて、いっぱい振り回したよ」
「俺は、頼ってくれて嬉しかった」
「……嘘つき」

「優梨、顔上げて、こっち向いて」

言われた通り、私は泣き腫らした目で、ソウちゃんの真っ直ぐな瞳を見据えた。
ソウちゃんは、今にも泣きそうな顔をしていた。

「どうしたの……?」

「……もう、こんな関係、終わりにしよう」

息が詰まった。
分かっていたはずなのに……

ー-コンナカンケイ、オワリニシヨウ

それは、想像していたよりずっと、絶望的な響きを持っていた。

「……私もそう思ってた。これで、ソウちゃんは自由になれるね。迷惑ばっかりかけてごめん。合鍵も返すよ」

ソウちゃんの顔を見ることが出来なくなって、視線を落とした。
溜息が聞こえた気がした。

「優梨。1つ、訊いていい?」
「……なに?」


「優梨は俺のこと、どう思ってた……?」


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