そういう、関係
言ってしまおうと思った。
どうせ今日で、こんな関係も終わってしまうんだから。
「……好きだったよ」
太陽みたいに眩しすぎる笑顔も
私の髪を撫でる、荒れた手も
明るくて穏やかな声も
私を包み込む大きな体も
優しすぎる性格も……全部、全部。
「好きで、好きで、苦しかった……本当は、ソウちゃんに愛されたかった……!でも」
話の終着点を見失いながらも、ひたすら言葉を続ける。
「怖くて。ソウちゃんに拒絶されたらって思うと、怖くて……っ。私、今までちゃんと恋愛したことなくて、ダメな女で……」
涙が止まらなくて、私は唇を噛み締める。
すると、大きな手で、ふわり、と頬を優しく包みこまれた。
「……俺、待ってた」
「え……?」
「優梨が、好きって言ってくれるの、ずっと待ってた」
どういうこと……?
私はバカみたいに口をぽかんとあけて、ソウちゃんの顔を見上げる。
「俺からは言えなかった。俺が言ったら、優梨は絶対流されると思ったから」
「ちょっと、意味わかんない……」
「だから」
息が止まりそうになった。
その照れくさそうな微笑みがあまりにも、きれいで。
「俺も優梨のことが好き。大好き……」
私の頬を包み込んでいる手の親指が、唇にそーっと触れる。
「可愛い……」
熱っぽい瞳。
心臓の音が、耳の奥でドクドクと響いた。
「ずっと、優梨にキスしたかった。もちろん、それ以上のことも……」
その声は、消え入りそうなくらい小さくて、切なげで、私の心臓を全て溶かし尽くしてしまいそうな威力があった。
互いを確かめるような、熱い視線が絡み合う。
ソウちゃんの綺麗な顔が徐々に近づいてくる。
真っ直ぐな瞳から、目が反らせない。
もう少し……
今にも唇が触れそうな距離。
でも、まだキスは落とされない。
わずかな距離を保ったまま、焦らすように見つめ合う。
それは、キスする瞬間を迎えてしまうのが勿体無いと思えるくらい、甘い時間で……
「……いい?」
この状況で訊くなんてズルい……。
私がうん、と小さく頷いたのを合図に、優しく唇が落とされた。
それは、ファーストキスみたいな、純朴な口づけだった。