カタブツ皇帝陛下は新妻への過保護がとまらない【番外編】
「それは?」
興味を持ってしまった弟に、心の中で舌打ちをした。
「ユーパリアからの電報です。女官が毎日モニカ様のご様子を知らせて来るのです」
「へえ。皇帝陛下はそのようなことをなさっていたんですか。意外ですね」
まるでモニカ個人には興味がないように振る舞っておきながら、こまめに彼女の様子を窺っていた兄のことが、エルヴィンには思い掛けなかったのだろう。大きな目をしばたたかせ、ますます興味深そうに電報を見つめる。
「アルバン、電報は執務室へ届けておけ」
面白くない気持ちが湧いてきて、早くエルヴィンの興味を電報から逸らそうとした。ところが。
「いえ、その。本日は一刻も早くお届けした方が良いと思いまして」
すでに中を改めたアルバンが、慌てていたことを思い出したように電報を両手で差し出してきた。その様子に、リュディガーは眉をひそめそれを受け取る。
開いた紙に打たれたメッセージは、いつもと少し違っていた。
『モニカ様が倒れられました。疲労のようです』
リュディガーが表情をこわばらせる。
口を噤んだまま固まってしまった姿を見て、エルヴィンも何かを察したようだった。
「モニカに何かあったの?」
しかし、そう尋ねた次の瞬間。リュディガーは手に持っていた電報をエルヴィンに押し付け、廊下を駆け出していた。
「ブルーノはいるか! すぐに馬車と船の手配をしろ! ユーパリアに向かう!」