カタブツ皇帝陛下は新妻への過保護がとまらない【番外編】

後日。
リュディガーは視察で街へ出た際、供にブルーノとわずかな衛兵だけを連れて買い物に出た。

まさか女性用の衣料店になど皇帝が入っていく訳にもいかず、フードの付いた外套を目深にかぶって、実に怪しげな出立ちで店内を物色する。店員の訝しげな視線が実に痛々しかったが、おかげでモニカによく似あいそうなエプロンを見つけた。

――結婚をしても、俺のために菓子を焼いて欲しい。

そんな願いを籠めたプレゼントだった。

『夫婦になり、これから何十年共に過ごそうとも、あなたの作った菓子を食べ一緒に静かなティータイムを過ごしたい』

そう書いたメッセージカードを添えようか迷って、リュディガーは結局やめた。まだモニカが自分に再び恋をしてくれている確信はない。自分のひたむきな想いを押し付けることは、ためらわれた。

その代わり、馬車に嫁入り道具を運びこむ使役に、エプロンの入った青いリボンの箱を直接手渡した。

「俺が選んだと、伝えてくれ」

少しでもモニカに、この想いが伝わるようにと。


 
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