カタブツ皇帝陛下は新妻への過保護がとまらない【番外編】
若き皇帝陛下は思った。
自分が五年間、大切に温めてきた情熱は、やはり間違いではなかったと――。
「待たせたな、モニカ・ヘレーネ・クラッセン。約束通りあなたを迎えに来た」
高揚する気分を抑えて声をかけると、ワインレッドのドレスに包まれた華奢な肩がピクリと小さく跳ねた。そして、緊張が伝わってくるようにおそるおそるといった様子で、目の前の少女が垂れていたこうべを上げる。
まるで初対面のような面持ちだった。目を大きく見開き、言葉もなくこちらをまっすぐ見つめている。
けれど、それはリュディガーも同じだった。
五年ぶりに再会した初恋の少女は驚くほどに美しく清らかに成長していて、そのあまりの眩さに言葉すら失う。
穢れを知らない淡雪のような肌。小さな卵形の輪郭は編みこんだブロンドに縁取られ、それだけで芸術品のようだった。記憶と同じ琥珀色の瞳は目元に女性らしさを増し、見つめられるだけで男の欲を刺激される。バランスのいい鼻筋に、濡れたチェリーのような唇。そして上品なドレスに引き立てられる、華奢でしなやかな身体。
初めて会ったときから彼女の儚く清廉な雰囲気に惹かれはしたが、ここまで美しく成長していたとは予想外だった。
今すぐ、抱きしめてしまいたいと思った。
この可憐な花のような少女がもうすぐ自分の妻になり、五年前と同じようにはにかんだ笑顔を見せてくれるのだと思うと、リュディガーは湧き上がる衝動を抑えられる自信すらも失う。
しかし。
「ご、御無沙汰しております。陛下……」
緊張のあまり掠れる声で挨拶をした彼女を見て、理性が自分を咎めた。
モニカは哀れなほど緊張していた。白い肌を病人のように青ざめさせ、麗しい唇も、小さな手も、震えを止められずにいる。
その姿を見て、リュディガーの中にさまざまな感情が湧いた。