カタブツ皇帝陛下は新妻への過保護がとまらない【番外編】

結婚式まで、あと三ヶ月を切ったある日のこと。

電報以外に女官に週一回送らせているユーパリアからの報告書が、リュディガーの元に届いた。

内容はモニカの健康状態、精神状態。結婚準備は順調に捗っているかなどの報告。そしてそれ以外に特に変わったことがあれば記すように命じてある。

幸いなことにモニカは心身ともに安定していて、結婚準備は滞りないと書かれていた。リュディガーはそれに目を通し、静かに安堵する。しかし。

二枚目の便箋に綴られていた文字を目で追っていくうちに、彼は腹の底から沸々と湧き上がるような怒りを感じ始めた。

リュディガーはすぐさまブルーノに命じ、執務室へエルヴィンを呼び出した。


「エルヴィン。お前が先週チェルシオに公務に出た際、ユーパリア城にまで行ったとの報せを、俺は受けていないが?」

率直に咎められ、エルヴィンは気まずそうに「ああ、そのこと」と視線を泳がせる。

「ついでに立ち寄っただけだよ。モニカとは家族になるんだ、顔ぐらい見に行ってもおかしくないだろう?」

「ならば何故報告しない。やましいことがなければ、俺に言えるだろう」

「やましいことは残念なぐらいないけれど……でも顔を見に行っただけだと報告しても、どっちみち兄さんは怒るじゃないか」
 
弟の子供っぽい言い訳に、リュディガーは当然納得出来ない。

「報告にはずいぶん長く滞在したと書いてある。お前が長時間モニカと話す用事など、俺には見当たらないが?」

「別に。少し彼女の話を聞いてあげただけだよ」

「だから、それが何だと聞いている」

今まで知らなかったが、兄は相当のやきもち焼きだとエルヴィンは心の中でこっそり呆れた。

ユーパリアに行ったとき聞いたモニカの話は、皇后になることへのちょっとした不安と、夫になるリュディガーにどう思われているかという相談だった。

女官がモニカを非難していたことは口止めされているし、ましてや夫の気持ちが知りたいなどと言う半ば惚気のような相談を、自分の口からリュディガーに報告するのも面白くない。
 
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