カタブツ皇帝陛下は新妻への過保護がとまらない【番外編】
「すまない。慣れないあなたに心細い思いをさせたな。俺もユーパリアから付き添うべきだった」
心から申し訳なく思うのに、腕の中のモニカは健気にも首を横に振る。
「陛下が謝られることではありません……、皇后になるための尊いしきたりなのですから」
嗚呼、とリュディガーの胸がまた強く締めつけられる。妻に弱音を吐かせてやれない自分が、不甲斐ない。
「泣くほどつらかったくせに、我慢をするんじゃない。俺は言ったはずだ、もっと夫となるべく男に頼れと。俺はあなたに、そんな顔をさせて祭壇に立たせたくはない」
もっとモニカがわがままを言ってくれたら、と思う。自分にだけでいい。こんな儀礼は嫌だ、こんな堅苦しい式典から私を助けて、と縋ってくれたなら。きっと皇帝の責任も五百年の伝統もかなぐりすてて、彼女を助けたに違いない。
そこまで考えて、リュディガーは小さく首を横に振った。
モニカはそんなことを口にする女ではない。だからこそ、自分が彼女の一番近くでその気持ちを汲んでやらなくてはいけなかったのだ、と思い直す。
「ごめんなさい……私、泣いてばかりで……」
腕の中のモニカは弱々しくそう言った。
この期に及んでも自分に気丈さを求める彼女が、リュディガーには愛おしくて痛い。
「気にするな。あなたの涙を止めるのは俺の役目だ」
心からそう思い、そう願う。
きっとモニカにはこれからも皇后としての苦難が待ち受けるだろう。けれど、自分が皇帝である以上、彼女をその座から降ろしてはやれない。
そのかわり、リュディガーは片時も離れずモニカの手をとろうと思う。
険しい道なら抱きかかえて歩み、傷付くことがあれば自分の手で癒してやろうと。
命尽きる日まで、か弱くも気高い皇后を守り支えることが自分の運命だと、リュディガーはモニカを抱きしめながら強く決意した。