あくびがとまらない
「舞、聞いた?あの転校生の話!」
一限目が終わると、クラスメイトの理沙がニヤニヤ笑いながら話しかけてきた。
「うん。イカの塩辛が好きなんだってね」
「違うよ!…趣味の話」
わざわざ言うかなぁ、そんなこと。と切りそろえられた前髪を震わせた。
ちょうど真反対の席を見ると、上杉くんは何をするわけでもなく前を向いて座っていた。
周りのクラスメイトはそんな上杉くんの様子を伺いつつ、朝から聞いてしまった刺激的な自己紹介について思い出しては話のネタにして楽しんでいる。
「普通言う?転校してきて、趣味は死に方を考えることですとかさぁ」
「うーん、まあすごい勇気あるよね」
次の時間の用意をしながら相槌を打つ。
確かに変わった人だなぁとは思う。
だけど、別にそれだけの話だ。
一時間目の現代文の時間、上杉くんは別に規制を発するわけでもなく静かに授業を受けていたし、あの発言はもしかしたらウケ狙いだったのかもしれない。
私的には特になんの面白みもなかった。
死に方を考えることです、か。
確かに、考えないといけないことだろう。
誰だかが、春の桜の木の下で死にたいなどと書いていたらしい。
やはりみんな多かれ少なかれ死に方を考える機会はあるのだろう。
それが、上杉くんにとっては今だったというわけだから趣味は死に方を考えることです、と言ってしまうのも無理はない。
けれども、あの発言のおかげでいつもとは少し違う日常を送っているのは事実なわけで。
私は理沙の言葉にまた適当に相槌を打ちながら「ありがとう」と心の中で感謝した。
一限目が終わると、クラスメイトの理沙がニヤニヤ笑いながら話しかけてきた。
「うん。イカの塩辛が好きなんだってね」
「違うよ!…趣味の話」
わざわざ言うかなぁ、そんなこと。と切りそろえられた前髪を震わせた。
ちょうど真反対の席を見ると、上杉くんは何をするわけでもなく前を向いて座っていた。
周りのクラスメイトはそんな上杉くんの様子を伺いつつ、朝から聞いてしまった刺激的な自己紹介について思い出しては話のネタにして楽しんでいる。
「普通言う?転校してきて、趣味は死に方を考えることですとかさぁ」
「うーん、まあすごい勇気あるよね」
次の時間の用意をしながら相槌を打つ。
確かに変わった人だなぁとは思う。
だけど、別にそれだけの話だ。
一時間目の現代文の時間、上杉くんは別に規制を発するわけでもなく静かに授業を受けていたし、あの発言はもしかしたらウケ狙いだったのかもしれない。
私的には特になんの面白みもなかった。
死に方を考えることです、か。
確かに、考えないといけないことだろう。
誰だかが、春の桜の木の下で死にたいなどと書いていたらしい。
やはりみんな多かれ少なかれ死に方を考える機会はあるのだろう。
それが、上杉くんにとっては今だったというわけだから趣味は死に方を考えることです、と言ってしまうのも無理はない。
けれども、あの発言のおかげでいつもとは少し違う日常を送っているのは事実なわけで。
私は理沙の言葉にまた適当に相槌を打ちながら「ありがとう」と心の中で感謝した。