甘い罠
『別のことって?』


「圭さんのこと」



やっぱり知ってるんだ


『なんであんたが知ってるの?』


「進路室で偶然聞いただけ。もう合格決まったって言ってたし」




ちょっと安心した


あたしが遅かったんじゃなかったんだ



『うん、留学しちゃうんだって』



「へぇ・・それで、落ち込んでるんだ?」



『え?なんで?』



「声が元気ないし・・・ちょっときて?」



何だろう・・・


ベランダの仕切りのところまで近寄ったら手が伸びてきた



『ひゃッ?』


拓磨の手はあたしの目元に当てられた



「やっぱり、泣いたんだね」


『なんでわかるの?!』


「熱もってるから」




そういって拓磨は手をひっこめた



まだ熱もってたんだ


明日腫れてなきゃいいんだけど・・・
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