俺様社長と強引で甘々な結婚
「こんなこと、あなたに頼むのは間違いだとわかっています。でも今はあなたにしか頼めないと思っています。これは親戚関係とは関係なく、ここの社長として京都の呉服屋の跡継ぎのあなたへのお願いです。どうか、御社の商品をうちで販売させていただけないでしょうか」



春馬さんの言葉ですべては理解できなかったもののトラブルになっていることが少しだけわかった。私たちは今年の冬から新たな試みとして、着物の販売をするために準備を進めていた。きっとそれが何らかの形で白紙になろうとしている。


確かに進めてはいたものの難航していたのは事実だから。



「うちの着物をここで販売したいということですか?突然言われても返事できへんなあ。でも、一つだけ条件聞いてくれたら、考えてもいいですよ」


「本当に?!私からもお願いします。今の話でなんとなくですけど、例の件が白紙になったんですよね?」


「ああ。でも今、お前の出番はない。今、私はこちらの次期社長と話をしている。下がっていなさい」


いつもとは違う春馬さんの真剣なまなざしと少し強めの静止に、私が口を出す場所ではないと思えた。春馬さんが、いや普段は仕事をしない社長が頭を下げてまで頼み込んでいるのにいくらいとことはいえ、私の出る幕ではない。


「ほんま、急にそんな社長モードになられてもなあ。さっきは偉そうな口叩いてたのに。まあいいわ。そこまで言うってことは覚悟もあるってことやろし。そしたら単刀直入に言わせてもらいますな。りぃちゃんと離婚してください。そしたらこちらと提携させてもらいます。どうですか?」


「アキちゃん!」


と私が動揺して大声をあげてしまったけれど、慌てて口を覆った。
私が出てはいけない。
決めるのは私じゃなくて社長だ。


もちろん、社長の決めたことなら私だって逆らうことはできない。私は社長の言葉を待つだけ。

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