俺様社長と強引で甘々な結婚
「すみませんが、個人的に二人で食事をするつもりはありませんので、申し訳ありません」
デートの前日、今日は少し打ち合わせでバタバタとしていて、二時過ぎにようやくお昼休憩を取ることができた。
お弁当を片手に休憩室に向かおうとすると、中から声が聞こえてきた。
清水社長と言っていたから、春馬さんが中にいるのは間違いない。
気づかれないように、中をこっそりと覗くけれど、女性の後ろ姿しか見えない。
ただ、声は二人ともいつもより大きく話しているのかよく聞こえてくる。
「一度でいいんです。私、ずっと清水社長に憧れていて…好きなんです」
その言葉とともに、女性が春馬さんに抱きついた。嫌だ、やめて。
「迷惑です。インタビューにも答えたとおり、私には大切にしている人がいますので」
腰に巻きつけられた腕をすぐに外した春馬さんは、少しきつめにそう言った。
「あれ、あれってビジネス上の作り話ですよね?ああ言えば、印象も良くなりますし、女性も寄ってこないですもんね。でも、余計にあのインタビューを読んで、好きになったんです」
「いいえ、あれは本当です。俺は、その彼女の夢を叶えたくて、このショップを作りました。なのでどれだけ好意を寄せられてもその彼女に叶うことはありません」
私には嘘だと言った『彼女』
やっぱり本当だったんだ。
それ以上、聞いていられなくて、私はそっとその場を後にした。