スーパーアイドル拾いました!
「気持ちいなぁ。こんなの初めて……」
海斗が風の吹いてくる遠くの山を見て言った。
「ええ――っ。だって、海外とかもっと素敵な所に、いっぱい行っているんじゃないの?」
「うん…… そうだよな…… でも、なんだろう? 久ぶりに人間らしく癒されてる」
「ふーん。そうなんだ……」
海斗の風に吹かれ、気持ちよさそうに遠くを見る目が、柚奈の胸の鼓動を早く動かせた。
「ねえ、柚奈さん…… 立川笑(たちかわえみ)って知ってる?」
「うん。可愛い女優さんよね? あっ……」
「思い出した? もう、何年も前に俺と噂になったの……」
「うん……」
何故か、柚奈の胸にチクンと痛みが走った。
「俺さ、笑の事を本気で好きだったんだ…… でも、あの頃、売れ出したばっかりで、事務所がもみ消したんだ。おかげで、大きなダメージは無かった。でも、その時、事務所と約束したんだ。俺が、仕事で成果を出して、彼女が出来てもちゃんと付いて来てくれるファンを持てるようになったら、結婚するって…… だから、必至で頑張って、やっと認めてもらえる所まできたんだ……」
柚奈は黙って、海斗の話を聞いていた。
「だけど…… 笑の奴、他の男と付き合っていたんだ……」
「えっ。マジ……」
柚奈は思わず、海斗に同情の眼差しを送ってしまった。
「でさ、なんか色々が、解らなくなっちゃってさ…… 自分が何処へ向かっているのか? 今まで何をして来たのか? 気が付いたら、この近くのサービスエリアで休憩に停まった時、思わず逃げ出していて…… 走って、走って、あの公園にたどり着いた……」
「ふ……ん。失恋して自暴自棄になった事?」
「多分…… でも、笑の事がショックって言うより、自分自身なんだよな…… なんか、自分という人間がよく分からなくなった、ていうか?」
柚奈は上手い言葉が見つからず海斗を見た。
「そうだったんだ…… 笑さんの事はよく分からないけど…… ただ、確かなのは、私みたいいに、海斗の演技見て、ドキドキしたり、歌を聞いて元気もらったりして、大変な事があっても、乗り切ってきた人達が沢山いるって事よ。それだけは事実だと思うけどなぁ」
「そうだな…… ありがとう……」
海斗は言った。
しかし、海斗の中にはまだまだ、乗り越えられない深い物があると柚奈は感じた。
「いいなぁ、真…… 俺も、部活やったり、恋愛したり普通の学校生活送りたかったな……。真の歳には、俺もうデビューしていたからさ……」
「そう? 海斗は海斗にしか手に入れられ物があったんじゃないの? 人の事は良く見えるものよ?」
柚奈と海斗は目を合わせて笑った。
あまりにも海斗が近くて、微かに触れる肩が震えた。
海斗の顔から笑みが消え、柚奈の目をじっと見つめた。
海斗の手が、柚奈の頬に近づいてきたと同時に、真と寧々が戻って来る姿が目に入った。
柚奈は慌てて立ち上がり、川の水に手をさらして気持ちを落ち着かせた。
これは、都合のいい夢に過ぎないと……
海斗が風の吹いてくる遠くの山を見て言った。
「ええ――っ。だって、海外とかもっと素敵な所に、いっぱい行っているんじゃないの?」
「うん…… そうだよな…… でも、なんだろう? 久ぶりに人間らしく癒されてる」
「ふーん。そうなんだ……」
海斗の風に吹かれ、気持ちよさそうに遠くを見る目が、柚奈の胸の鼓動を早く動かせた。
「ねえ、柚奈さん…… 立川笑(たちかわえみ)って知ってる?」
「うん。可愛い女優さんよね? あっ……」
「思い出した? もう、何年も前に俺と噂になったの……」
「うん……」
何故か、柚奈の胸にチクンと痛みが走った。
「俺さ、笑の事を本気で好きだったんだ…… でも、あの頃、売れ出したばっかりで、事務所がもみ消したんだ。おかげで、大きなダメージは無かった。でも、その時、事務所と約束したんだ。俺が、仕事で成果を出して、彼女が出来てもちゃんと付いて来てくれるファンを持てるようになったら、結婚するって…… だから、必至で頑張って、やっと認めてもらえる所まできたんだ……」
柚奈は黙って、海斗の話を聞いていた。
「だけど…… 笑の奴、他の男と付き合っていたんだ……」
「えっ。マジ……」
柚奈は思わず、海斗に同情の眼差しを送ってしまった。
「でさ、なんか色々が、解らなくなっちゃってさ…… 自分が何処へ向かっているのか? 今まで何をして来たのか? 気が付いたら、この近くのサービスエリアで休憩に停まった時、思わず逃げ出していて…… 走って、走って、あの公園にたどり着いた……」
「ふ……ん。失恋して自暴自棄になった事?」
「多分…… でも、笑の事がショックって言うより、自分自身なんだよな…… なんか、自分という人間がよく分からなくなった、ていうか?」
柚奈は上手い言葉が見つからず海斗を見た。
「そうだったんだ…… 笑さんの事はよく分からないけど…… ただ、確かなのは、私みたいいに、海斗の演技見て、ドキドキしたり、歌を聞いて元気もらったりして、大変な事があっても、乗り切ってきた人達が沢山いるって事よ。それだけは事実だと思うけどなぁ」
「そうだな…… ありがとう……」
海斗は言った。
しかし、海斗の中にはまだまだ、乗り越えられない深い物があると柚奈は感じた。
「いいなぁ、真…… 俺も、部活やったり、恋愛したり普通の学校生活送りたかったな……。真の歳には、俺もうデビューしていたからさ……」
「そう? 海斗は海斗にしか手に入れられ物があったんじゃないの? 人の事は良く見えるものよ?」
柚奈と海斗は目を合わせて笑った。
あまりにも海斗が近くて、微かに触れる肩が震えた。
海斗の顔から笑みが消え、柚奈の目をじっと見つめた。
海斗の手が、柚奈の頬に近づいてきたと同時に、真と寧々が戻って来る姿が目に入った。
柚奈は慌てて立ち上がり、川の水に手をさらして気持ちを落ち着かせた。
これは、都合のいい夢に過ぎないと……