スーパーアイドル拾いました!
 寧々を送り届け、車はアパートの駐車場へと止まった。

 エンジンを切ると同時に一台の車が入って来た。所長の岸谷の車だ……


 柚奈が車から降りると、岸谷は嬉しそうに、白い買い物袋持って車から降りてきた。


「どうしたんですか? 所長……」

 柚奈は驚いて岸谷に近づいた。


「近くに用事があって、これ、きゅうりと二十日大根だけど、良かったら……」


「ありがとうございます」

 真が車から降りて来た。

「真君、こんにちは……」

「こんにちは。いつもありがとうございます」
 真はぺこりと頭を下げた。


「大きくなって…… あんなに小さかったのに…… しっかりしてきたなぁ」

 岸谷が感心して言ったと同時に、海斗が車から降りて来た。


「えっ」

 岸谷の表情が変わった。


「所長の岸谷さんよ」

 柚奈が海斗に紹介するが……


「桐嶋です…… 柚奈がお世話になっています」

 サングラスを外して頭を下げた。


「ちょ、ちょっと」

 柚奈が言うが、海斗はアパートの階段を上がり部屋へと入って行った。


「彼は?」

 岸谷は、いつもの穏やかな顔とは違い険しい表情だった。


「ええ、ちょっと……」

 柚奈も返事に困った。


 岸谷は何か言いた気な様子だったが、柚奈の忙しそうな姿に渋々と帰って行った。


 柚奈は、アパート入ると、海斗を捕まえた。


「ちょっと! 何よ、あれ? ばれたらどうするのよ!」


「大丈夫だよ、俺オーラ無いし、あのおっさんじゃ気付かないよ!」
 海斗は不機嫌そうに言った。


「全く! 本名言わなくたって……」

 柚奈はぶつぶつと言いながら夕食の支度を始めた。


 夕食のテーブルには、きゅうりと二十日大根が並んだ。
 味噌マヨを付けて食べるだけだが、新鮮な物は旨い!

 柚奈も真も、美味しそうに頬張るが、海斗は別のおかずしか食べない。


「海斗もきゅうり食べたら? 獲れたてで、美味しいよ!」

 柚奈が勧めたが……


「俺、きゅうりは嫌い!」

「ウソつけ! 昨日、食っていたじゃんか?」
 真が笑い出した。

「何がおかしいだよ?」

 海斗が、ぶすっとして言った。


「ほらほら、食ってみ?」

 真がふざけて海斗の前にきゅうりを差し出す。


「おまえ、性格悪すぎ…… そのうち寧々に捨てられるぞ?」


「うるせえよ!」

 真と海斗はきゅうりを手に、じゃれあっている。


 その姿に、柚奈は、真は大会前の緊張感は全然ないし…… 
 海斗はそれほどまでの悩みが本当にあるのだろうか? とため息が出た。

 でも、二人の姿を見ながらのビールは美味しくて、思わず笑みが毀れた。

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