スーパーアイドル拾いました!
「きゃあ!」

 柚奈は悲鳴を上げた。


「連絡しないで!」


「でも……」


「お願い…… 助けて……」


 顔を上げた男は、朝の情報番組で見たばかりの顔だった。


 驚きすぎて声も出ない。

 桐嶋海斗!


「い、いや、そうは言っても……」


「お願い……」


 見たこともない綺麗な瞳に見つめられ、柚奈は目を逸らす事が出来なかった。

 ほんの少しの間だが、時間が止まったような……


 柚奈はスマホをポケットにしまい、海斗に手をかけた。


「起きられる?」

「ああ」


 柚奈は海斗の腕を自分の肩にまわし、片手で腰を支えリュックを持つと車へ向かい、助手席のドアを開けた。
 海斗は抵抗する事も無く車に乗った。


 柚奈は、アパートの部屋の明かりを確認した。

 アパート駐車場に車を停めると、スマホを出し指でスライドさせ耳に当てた。


「連絡は……」

 海斗の弱々しい声に、安心させるように言った。

「大丈夫よ」



「ああ、真? 悪いけど車まで降りてきて」


『なんだよ? 米でも買ったのか?』


「もっと、いいものよ。早く?」


 柚奈が車から降りると、真がアパートの階段を降りるのが見えた。

 柚奈は助手席のドアを開け、真を手招きした。

「これ、持っていってくれる?」

「おい! 人間じゃねぇか?」

 真が驚くのも無理は無い……


「たぶんね……」


 真は、ここで討論しても仕方ないと思ったようで海斗の肩に手を回した。

「大丈夫か?」


 真は、海斗の肩を抱き車から降ろすと、アパートの階段へと向かっていった。


 柚奈は海斗のリュックと、野菜などを持ち慌てて後を追った。
< 7 / 47 >

この作品をシェア

pagetop