危険なアイツと同居生活【番外編】
「あー……なんかいいバイトないのかなぁ」
再び蒼がそう言った時……
ふと思い出した。
あたしは芽衣と、日雇いでコンサートスタッフをすることになっていたことを。
中規模のホールで、『カサブランカ』というバンドのライブを手伝うバイトだ。
バンドのコンサートスタッフなんて、Fから離れている蒼は嫌かもしれないと思った。
だけど、
「それ、俺もやろうかな」
なんて蒼は言う。
そんな蒼にわざと言ってやった。
「蒼も普通のバイトをして、庶民の感覚を知ったほうがいいかもね」
実際、蒼は普通の学生らしい生活をしているのだが。
だが、蒼はあたしの言葉に頷いた。
「もう、Fにも頼れないしね。
俺は普通に生きていかなきゃ」
蒼はそんなことを言うけど、なんだか晴れ晴れとした顔をしていた。