溺愛は突然に…
…話が終わり、駅で別れた楓は、電車に揺られながら、彰人の事を考えていた。

…最初に面接したのは彰人。簡単に採用だと言った彰人に、何の疑いもなく、頷いた陽翔。

オフィス内での、彰人を取り巻く社員たちの行動。

先ほど、共同経営者だと聞かされて、驚いた楓に、彰人は言った。

「…社長はあくまで、陽翔だ。俺はその補佐。だから、何も気にするな」

と。

彰人は無表情で、怒りっぽい。

でも、仕事は常に完璧だし、周りの社員達との連携も良くできている。

それでも、彰人がこの会社の社長になることはない。

自分には、その器がないと思い込んでるようだった。

…次の日、大学の講義に向かった楓は、友達の明美と教室で話をした。

「…ふーん、なんだか訳アリね、陽翔さんと、彰人さん。そんなところで、バイト続けられるの?」

「…続けたいですって、彰人さんには言ったよ」

「…本当に、やっていける?」

「…ちょっと、不安」

楓の言葉に、明美は困ったように笑った。

「…とりあえず続けてみて、無理だと思ったら、辞めな?相談にはのるし。一人で抱え込むんじゃないよ?」

「…ありがとう、明美」

…1日の講義が終わり、楓はバイトに向かう。

…今日は、陽翔と彰人は、二人でデザイン空間の仕事に行ってるとのことで、楓は、皆に頼まれた雑用をこなしていた。
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