溺愛は突然に…
今日は、バイトは6時まで。

楓はしっかり雑用をこなしていた、時間になったので、帰り支度を始めた。

「…お疲れ様でした、お先に失礼します」

オフィスにいた社員達に、楓は挨拶をすると、外に出ようとあるきだした。

…今日は、陽翔にも、彰人にも会えなかったな。

頭の片隅で、そんな事を考えた楓。

でも、なぜそんな事を思ったのか、本人にはわからなかった。

「「…あ」」

一階のロビーを抜け、外に出た楓は誰かとぶつかった。

「…す、すみません、前をちゃんと見てなく、て」
「…こちらこそ、て、楓ちゃん?今帰り?」

ぶつかった相手は。

「…西城社長」
「…もう、今日の仕事は終わり?」

「…はい。終わったので、帰ろうかと」
「…そうなんだ。あ、ちょっと話があるから、少しだけあそこで待っててくれる?」

陽翔が指差したのは、ロビーにある椅子。

「…でもあの「…ごめん、これ置いたら、すぐ降りてくるから」

「…西城社長!」

…楓の言葉を聞こうともせず、陽翔は走っていってしまった。…陽翔にどう接したらいいのかわからないでいるのに、二人きりなんて…

「…楓?」
「…彰人、さん」

…そうか、二人で同じ仕事に行ってたのだから、この時間にここにいてもおかしくない。

「…もう、あがりか?」
「…はい」

「…なんか、元気ないみたいだけど、どうかしたのか?」

彰人の洞察力はとても優れている。楓のちょっとした変化にも、気づいてしまう。
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