溺愛は突然に…
その寝顔のなんともあどけない無防備な事。

可愛いなんて思いながら、人差し指で楓の頬をつついてみた。…が、身じろぎしただけで、全く起きる気配もない。

「…楓」
「…んー、スー、スー」

クスッと笑って、しばらくその寝顔を見ていた彰人だったが、いつの間にか、その寝顔に引き寄せられるように、自分の唇を楓の頬にソッと当てていた。

「…?!」

当たって初めて自分の行動に驚き、慌てて体を起こした彰人は楓がまだ寝ていることに安堵する。

「…楓、楓!起きろ!」
「…ふぇ?…はい?」

耳元で大きな声で呼ばれて、ようやく起きた楓は寝ぼけた目を擦ってみた。

「…彰人さん?」

彰人と目の合った楓はまだ夢うつつなのか、ふにゃぁっとした笑顔を浮かべた。

…その笑顔のあまりの可愛さに、彰人の理性は崩壊?

「…」

彰人は楓を抱き寄せていた。

そしてようやく楓の頭が覚醒する。…が、時すでに遅し?

頭が真っ白で、何も考えられない。

「…楓」
「…」

「…楓、可愛い」
「…そ、そんなこと」

真っ赤になった楓を見て、彰人は困ったような笑みを浮かべて、楓の体を離した。

「…ゴメン、驚いたよな」

彰人の言葉に何度も頷いた楓を見て、彰人はフッと笑った。

「…帰ろう、遅くなってごめんな」

彰人に促されるまま、楓は勉強道具をカバンにしまい、アパートまで送ってもらった。
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