ごっこ遊び
なんでこんなところに二人でいるの。
二人の接点は、柊碧人が先輩に告白したことしか浮かばなくて、ついそのことを考えてしまう。もしかして、二度目の告白? わたしとの恋人ごっこも終わったし、やっぱり諦めきれなくて、もう一度、気持ちを伝えようとしたとか。
「女の子がダメって言ってたじゃん……」
彼の中に、そんな熱い気持ちがあるとは思えなかったのに、有村先輩の思いは別だったんだ。
思い出さないようにしていたことが閉まりきらなくなったおもちゃ箱から溢れ出て来るようだった。
放課後に柊碧人と買い物に行ったこと、帰り道のキス、寂しくなくなったと言ってくれた言葉……それが、ついさっき言われたみたいな温度で伝わってくるから、余計に切なくなった。
「美優ちゃん、どうしたの?」
同じ班の子に声をかけられ、ううんと頷いてみせたけど、突き止めたい衝動が抑えられなかった。
「ごめん、ちょっと先に帰るね。用事があったんだ」と化学室を飛び出した。
二人はもういないかもしれない。でも気になる。どうして一緒にいたのか。
ローファーにかかとを入れながら、あれは本当に告白で、二人が付き合ってしまったらどうなるんだろうと考えた。タケちゃんは、どうなってしまうんだろう。
足音が近づいて、顔を上げると息を呑んだ。
さっきまで校舎裏にいたはずの柊碧人が立っていたからだ。