「 好 き だ よ 」


両手で顔を覆う宇多くん。

「はぁ…」

って安堵100%みたいな。そんなため息が、覆われた手の中から聞こえてきた。


指の隙間から見える顔は、ほんのり赤い。




「宇多くんは優しいんだね」



これはちょっと新しい発見。

照れ屋で可愛いところしか、私知らなかったから。



「そんなことないよ」



まっすぐ全力否定。

やっぱり自覚ないタイプ。


だけどそういうところが、宇多くんのいいところなのかもしれないな。




なんて、あまり知らない彼のことをすこし知ったところで私の課題が終わるはずも無く。


そろそろ本気でやばいと思い、白紙プリントに手を伸ばし、机の隅に転がったシャーペンを手に取って、カチカチ、と芯を出す。


「ほんとに帰っていいからね?」


当たり前にいてもらうのはやっぱり私の気が引けるから。


「うん」って頷く宇多くんだけど、やっぱり1ミリも動く気ない頑固者。


そんな宇多くんのご厚意をおなかいっぱい吸収して、私の脳よ、フル回転せよ!



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