「 好 き だ よ 」
◇
「あ、分かった。白石さん、プラスをマイナスに変えちゃう癖ある。それ意識してみて」
「はっ…なるほど」
「それから負の数の平方根を i を使って表して──」
「な、なるほど…!」
それから結局私は、ほとんどの問題を欠けることなく宇多くんにみっちり教えてもらい、全て解けた頃には授業1回分くらいの時間が過ぎていた。
今の気持ちは実に、達成感と罪悪感が、天びんにかけられている状態である。
「ありがとお〜宇多くんほんとに神…カミサマ…」
「力になれてよかったです」
机に項垂れる私の頭上で、嬉しさが混じったようなクリアな宇多くんの声が落ちてくる。
時計を見ると、時刻は19時ちょっと前。
こんな時間まで学校に残ることなんてほとんど無いから、申し訳なさが一気にどしっと押し寄せてくる。
「宇多くん、部活…友達とか大丈夫なの?」
「ん?うん。大丈夫だよ」
「ほんとかあ…?」
疑いの目を向けたら、「ほんとだよ」ってすこぶる優しい目で返された。
どうやら本当に大丈夫っぽい。