「 好 き だ よ 」


ほっと胸を撫で下ろし、散らかった机の上を片付けて、プリントたちをスクバの中にしまい込む。



「白石さん、今から職員室にプリント提出しに行くの?」

「あ、うん。終わったら机に置いといてって先生が」

「そっか」



がらがら、教室のドアを開けて、鍵を閉める。



「私 教室の鍵閉めるの初めてかも」

「こんな時間まで学校いることないもんね」

「うん。なんか変な感じ」



吹奏楽部の演奏も、野球部のノック音も聞こえなくなって、しんと静まる学校内。


薄暗さもあってちょっと怖さもありつつ、こういう雰囲気、何気に好きだったりする。




「……なんかいいよね。この時間の学校」

「あっ。私もね、今ちょうど同じこと思ってたよ」

「やっぱり?なんか表情がそんな感じした」



宇多くんお得意の、ふんわりスマイル。


和むなあ……。



「宇多くんの部活ってこんな時間までしてる時もあるの?」


「んー。大体18時くらいには終わるけど、ただどうしてもプレイに納得いかなかった日は今くらいの時間まで残ることもあるよ」

「そうなんだ。頑張り屋さんだ」



そうだよ、って、宇多くんが冗談めかして小さく笑う。



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